SSDやフラッシュメモリが主流になる前、そして今でも大量のデータを安価に保存する現場で活躍しているのが、「磁気」や「光」を利用した記憶装置です。
代表格であるHDD(ハードディスクドライブ)や、なじみ深いCD、DVD、ブルーレイディスク。これらはSSDのように電子をミクロの部屋に閉じ込めるのではなく、より直感的に「物質の物理的な状態を変えて、その違いを長く残す」という、いわば古典的かつ信頼性の高いアプローチをとっています。
人間が大昔、粘土板に棒で溝を刻んだり、インクの有無で文字を残したりした歴史の、まさにハイテク延長線上にある技術です。
HDD:高速回転する円盤と「ミニ磁石」の向き
HDDの内部には、鏡のようにピカピカに磨き上げられた磁性体(磁石の性質を持つ物質)が塗られた金属の円盤(プラッター)が入っています。
データを読み書きするとき、この円盤は1分間に数千回転という猛烈なスピードで回転します。その円盤の表面すれすれを、レコードの針のような「磁気ヘッド」が浮遊しながら移動します。
仕組みは非常にシンプルです。
- 磁石の向きが「上(N極)」を向いていれば = 「1」
- 磁石の向きが「下(S極)」を向いていれば = 「0」
書き込みの際は、ヘッドから強い磁力を当てて、円盤に敷き詰められた極小の磁石たちの向きをパチパチと変えていきます。磁石は一度向きが決まれば、外から強い磁力を当てない限りそのままの状態を維持するため、電源を切ってもデータが消えることはありません。
2026年現在でも、動画配信サービスの巨大なデータセンターや、AIの元となる地球規模の未加工データ(ビッグデータ)を蓄えておく場所では、1ギガバイトあたりのコストが圧倒的に安い大容量HDDが今なお現役で世界を支えています。
CD / DVD / ブルーレイ:レーザー光と「物理的な凹凸」
一方、音楽や映画の配布に一世を風靡したCDやDVDなどの光ディスクは、磁気ではなく「光の反射」を利用します。
プラスチック製のディスクの表面には、肉眼では絶対に見えないほど微細な「ピット(へこみ、穴)」と、平らな「ランド」が、らせん状にびっしりと刻まれています。
ここに細く絞ったレーザー光線を当てながら、ディスクを回転させます。
- レーザーが平らな場所(ランド)に当たると、光はまっすぐ綺麗に跳ね返ってきます。
- レーザーがへこみ(ピット)のフチに当たると、光は乱反射して弱くなります。
コンピューターはこの「光の跳ね返り方の強弱」をセンサーで読み取り、「綺麗に反射したら1、乱反射したら0(あるいはその切り替わり)」というように、0と1のデジタル信号へと復元します。
大量生産する際は、この凹凸の型(スタンパー)を使ってプラスチックをプレスするだけでよいため、映画やゲームのソフトを世界中に安価に大量配布する手段として、デジタル社会の発展に大きく貢献しました。
物理的な「違い」を残すということ
電子を閉じ込めるSSD、磁石の向きを変えるHDD、レーザーで凹凸を読み取るCD。
技術の仕組みや使っている物理現象は三者三様ですが、やっていることはすべて同じです。「物質に、後から読み取れる形で、物理的な『違い』をくっきりと残すこと」。
これこそが、コンピューターが過去を記憶し、未来へとデータを引き継ぐための不変の原理なのです。