1.2 AIとコンピューターの違いはあるのか

「AIと従来のコンピューターは、一体何が違うのだろうか?」──これは、多くの人が抱く素朴な疑問であり、専門家の間でも議論が分かれるテーマです。しかし、一般の常識的な視点からこの問いを見つめたとき、私は率直にこう結論づけたいと思います。

「本質的には、どちらも全く同じものである」と。

AIは、何かコンピューターとは異なる未知の超テクノロジーによって作られたわけではありません。AIもまた、コンピューターという大きな仕組みの一部であり、その延長線上にある存在です。人間と同じように、CPU(中央演算装置)という「頭脳」を使い、メモリやストレージにデータを記憶し、電気信号を行き来させながら、最終的には「ソフトウエア(プログラム)」の指示に従って動作しています。

つまりAIとは、コンピューターの持つ圧倒的な処理能力を、特定の目的──「人間の知的な振る舞いを模倣すること」──に特化させて応用した姿にすぎないのです。

私たちが普段使っているワープロソフトや表計算ソフトと、ChatGPTのような最先端のAIの間に、原理的な違いはありません。あえて違いを挙げるならば、それは内部の仕組みではなく、人間の目に映る「見かけ上の振る舞い」にあります。

従来のコンピューターソフトは、良くも悪くも「生真面目」でした。「Aというボタンを押したら、必ずBという結果を返す」「この数式を入力したら、この数値を出す」というように、人間が書いたルール(命令)と結果の対応関係が1対1で完全に決まっていたのです。そのため、ルールにないイレギュラーな事態が起きると、融通が利かずにフリーズしてしまいました。

一方でAIは、人間が1から10までルールを教え込む代わりに、「これが過去のデータだから、ここから自分でルール(傾向)を推測しなさい」という設計で作られています。そのため、私たちが曖昧な質問を投げかけても、過去のデータに照らし合わせて「おそらく、こういう返事をするのが最も確率的に正しいだろう」と、あたかも人間のような柔軟さで、もっともらしい反応を返してくるのです。

この柔軟であまりにも自然な反応が、私たちに「この機械は、従来のコンピューターとは違って、本当に自分で考えているのではないか」という錯覚、あるいは誤解を抱かせます。

しかし、その驚くべき振る舞いの裏側で起きているのは、やはりただの「膨大な計算処理」です。そこには直感も、ひらめきも、相手の気持ちを思いやる心もありません。

たとえば、AIがこちらの悩みに同情するような温かい言葉をかけてくれたとしても、それはAIが悲しみに共感しているからではありません。「過去の膨大な会話データにおいて、このような悩みの文字列の後には、こうした慰めの文字列が続く確率が最も高かった」という計算結果を出力しているだけなのです。

このように、AIとコンピューターの間に境界線はありません。あるのは、人間が受け取る「手応えの違い」だけです。AIという魔法のように見える技術も、その化けの皮を剥ぎ取れば、中から出てくるのは冷徹に計算を繰り返すコンピューターそのものなのです。

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